顎顔面補綴治療
高度な特殊入れ歯治療にも対応
舌がん、口腔がん、口蓋裂、脳梗塞、
外傷後の特殊な入れ歯/補助装置
顎顔面補綴治療とは、口の中の組織や顎骨の腫瘍切除、事故、炎症、先天性異常などで失った部分を修復して機能を回復する歯科の治療分野の1つです。
口の中、あるいはその周辺部分の失った部分を人工的に作り直すことによって、食べることや発音あるいは見た目などの機能の回復を図り、日常生活の質を大きく向上します。
さらに、外見の回復は自信を取り戻すきっかけとなり、社会生活の充実にもつながります。
詳しくは当院の専門医にご相談ください。
当医院で取り扱っている治療装置の種類
- 顎義歯(がくぎし)
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顎の骨や歯が失われた場合に使う特別な入れ歯です。失った歯の代わりになり、食べ物を噛んだり、話したりする機能を取り戻すのに役立ちます。
- 舌接触補助床(ぜつせっしょくほじょしょう)
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舌の動きが悪くなった方のために作る装置です。舌が上あごにうまく触れられるようにして、食べ物を飲み込みやすくしたり、はっきり話せるようにサポートします。
- 軟口蓋挙上装置(なんこうがいきょうじょうそうち)
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のどの奥の柔らかい部分(軟口蓋)の動きが悪くなった方のための装置です。その部分を持ち上げる手助けをして、食べ物を飲み込みやすくしたり、鼻にかかった声を改善したりします。
顎顔面補綴の治療の流れ
- 診察とカウンセリング
- まず、患者さんとのカウンセリングを通じて、口腔内や顔面の損傷を詳しく診察します。
必要に応じて画像診断を行い、損傷の程度や形状を確認します。
- 治療計画の立案
- 患者さんの状態や希望、治療の目的に基づいて、最適な治療計画を立てます。
補綴装置など患者さんと相談しながら決定していきます。
- 補綴装置の製作
- 治療計画に基づき、顎義歯や舌接触補助床などの補綴装置を製作します。
- 装置の装着と調整
- 補綴装置が完成したら装着し、位置やフィット感が適切であるかを確認します。
必要に応じて装置の微調整を行い、問題がなければ治療は完了となります。
- 定期的なリハビリテーション
- 治療完了後も定期的なメインテナンスが重要です。
治療の効果や装置の状態を定期的に確認し、必要に応じて調整や修復を行います。
これにより、長期的な機能回復と患者さんの日常生活の質の向上を目指します。
顎顔面補綴治療の症例
70代男性の症例
下あごの左側奥歯から、顎関節に近い部分にかけて、長期間続く骨の炎症(慢性骨髄炎)があると診断され、あごの真ん中あたりから、顎関節を含む左側の部分を取り除く手術を受けられました。その後、お腹の骨(腸骨)を使って、取り除いたあごの骨を再建しました。手術により顎の骨はつながりましたが、 手術した側に下顎が引っ張られる、下顎の動きがスムーズでない、上の歯と下の歯が正しくかみ合わないという問題が起こり、食べ物を食べたり飲み込んだりするのが難しい。はっきりと話すのが難しいといった症状を起こしていた。
治療の内容
主な問題点
- ・骨の高さが減っている
- ・口を開けるのが困難になっている
- ・上下の歯が正しくかみ合わなくなっている
- ・はっきりと話すのが難しくなっている
治療方法
-
パラタルランプを
付与した上顎義歯 -
下顎顎義歯
-
上顎義歯と下顎顎義歯
装着時 -
パラタルランプ
開口が難しい方でも使いやすいトレーを使ってお口の型採り正確に行い、残っている歯をしっかり支えながら、歯の位置を工夫したり特殊な形状を加えて、発音とかみ合わせを改善。
リハビリテーションとして、口を開けたり食事をする練習をすることで、食べ物をかむ力が大きく向上し、日常生活への支障が減少しました。また、長期的にこの良い状態が続くように、定期的な入れ歯の調整と再製作を行い、機能の維持を行っています。
70代男性の症例
上顎の右側の奥にあるくぼみ(上顎洞)に癌が見つかり手術を受けました。術後の状態として、上顎の真ん中から右側にかけて大きな穴が空き、右側の上の歯をすべて失い、上顎の内側と頬の間の溝(口腔前庭)もなくなってしまった事から、食事や会話が難しくなり、物を食べることで鼻から食べ物が漏れてしまうという症状を起こしていました。
治療の内容
主な問題点
- ・上顎の一部が欠損している
- ・皮膚や筋肉を使って欠損部を覆っている(遊離皮弁)
- ・通常の入れ歯では安定しにくい状態
治療方法
-
制作設計
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顎義歯
-
栓塞部リライン
-
顎義歯装着時
問題のある部分に強い力がかからないよう配慮しながら、口の中の動きに合わせて、入れ歯の形とかみ合わせのバランスを細かく調整して顎義歯を製作。
鼻と口をつなぐ穴を塞ぐ部分に硬い材料を使用し、食べ物や水が鼻から漏れるのを防ぎ、鼻にかかった声も改善しました。
また、放射線治療後の骨に悪影響が出ないよう、入れ歯の内側に保湿ジェルを塗るなどの指導して継続的なケアと調整を行っています。
60代男性の症例
右側の頬の内側の粘膜と左側の上顎の歯ぐきの癌治療により、口の中にかたい傷跡ができてしまい、口の中が乾燥するなどの問題も起こり、普通の入れ歯をつけるのが難しくなりました。
治療の内容
主な問題点
- ・口の中に固い傷跡ができている
- ・口の中が乾燥する
- ・放射線治療の影響で顎の骨が弱くなる可能性がある
治療方法
-
(左)精密印象|
(右)咬合床 -
咬合採得
-
ろう義歯
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義歯装着時
入れ歯を入れる空間を確保し、歯ぐきへの負担を減らすよう設計して顎義歯を製作しました。
傷跡を柔らかくするストレッチや、口の機能を回復させる訓練を行うことで入れ歯が使いやすくなり、日常生活で食べたり話したりする機能が回復し、見た目も良くなりました。
放射線治療の影響で顎の骨が弱くなる可能性があるため、入れ歯の内側に保湿ジェルを塗って予防しています。また、定期的な検診の間隔を短くして、慎重に経過を見守っています。
70代女性の症例
上顎の左側に悪性の腫瘍(がん)が見つかり、癌の切除を受けられました。
上顎の左側が、真ん中から犬歯(前から3番目の歯)あたりまで取り除かれ、頬の内側の粘膜や、喉の奥の柔らかい部分も一部取り除かれました。
また、鼻と口の中がつながってしまい、歯を支える骨の一部を失いました。別の病院で上顎の顎義歯を製作して使用していましたが、入れ歯がお口に合わず何度も修理を繰り返していました。
治療の内容
主な問題点
- ・鼻と口の間がうまく閉じられないため、食べ物を食べたり飲み込んだりするのが難しい
- ・口を開けるのが困難になっている
- ・上下の歯が正しくかみ合わなくなっている
- ・はっきりと話すのが難しい
治療方法
-
完成顎義歯の口腔内装着
- 完成顎義歯の口腔内装着
鼻と口をつなぐ穴をふさぐ部分(栓塞子)をしっかり作り、入れ歯全体をきちんと固定できるようにしました。
また、入れ歯を作る過程で歯型を取るときに、特別な型(分割トレー)を使用して、穴をふさぐ部分だけを作り、それがうまく固定できることを確認した後に、その部分に合わせて入れ歯全体を作りました。
結果として、口を最大限に開けても落ちなくなり、しっかり固定され、食べたり話したりする機能を改善することができました。
入れ歯の土台部分には透明な素材を使用することで、口の中で入れ歯がぴったり合っているかを確認しやすい設計にしました。
リハビリテーションとして、口を開ける練習や食べる練習を熱心に行い、日常生活で困ることのない程度まで口の機能が回復しました。
60代男性の症例
舌がんと診断され、舌と口の底の一部を切除した後に、首の右側にがんが広がり、リンパ節を取るとともに放射線治療を受けられました。
舌を切除したため口の底の右側が腫れ、舌の下から唾液が出ているのが見受けられました。
治療の内容
主な問題点
- ・別の病院で作った上の入れ歯は入れ歯が非常に不衛生な状態になっていました。
- ・下の入れ歯(顎義歯)を使っていなかったため、食べ物を食べたり飲み込んだりするのが難しい
- ・話すのが難しい
- ・奥歯のある部分が変形し、通常の入れ歯を支える場所がなくなっていた
- ・傷跡のために口を開けにくくなっていた
- ・舌の半分を切除したため、舌が小さくなり動きが制限されていた
治療方法
-
上顎義歯舌接触補助床
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下顎顎義歯
-
上顎義歯と下顎顎義歯
装着時 -
舌接触補助床と
舌の接触状態
口を開けにくい状態に対応するため、分割してお口のなかの型採りを行い、残っている歯でしっかり支えるように設計して入れ歯が安定するようにしました。
上の入れ歯には、舌の動きを助ける設計にしました。リハビリテーションとして、口を開ける練習や食べる練習を熱心に行い、新しい入れ歯で日常生活で困ることのない程度まで噛む力が改善しました。
今後、舌がさらに小さくなる可能性があるため、定期的な検査と調整を続けていきます。
70代女性の症例
左側の上あごの奥に良性腫瘍が見つかり、手術を受けて取り除きました。
手術後、鼻と喉の奥(鼻咽腔)がうまく閉じられなくなる問題が起きていました。
治療の内容
主な問題点
- ・傷跡のために軟口蓋(口の奥の柔らかい部分)がうまく上がらなくなっていました
治療方法
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拳上子置換修理
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軟口蓋拳上装置
(モバイル型)
鼻と喉の奥(鼻咽腔)がうまく閉じるように入れ歯に特別な部品(挙上子)をつけて製作を行いました。最初につけた挙上子では、水分が鼻に逆流してしまう問題が起こり、部品の形を変えて、より高く後ろをしっかり閉じるように修正を行いました。
話す時の明瞭さを確認しながら、固定式だった部品を少し動く形に変更して、最適な状態になるように調整しました。
結果として、話す時の明瞭さが改善して、水分が鼻に逆流する問題も解決しました。
※写真については患者様の同意を得て掲載しております
担当の歯科医師
松田 謙一 歯科医師
- 略歴
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- 2003年3月 大阪大学歯学部卒業
- 2007年3月 大阪大学大学院歯学研究科 修了 学位取得(歯学博士)
- 2007年4月 大阪大学大学院歯学部附属病院 第二補綴科 医員
- 2009年1月 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 助教
- 2019年4月 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 臨床講師
- 2019年9月 医療法人社団ハイライフ 大阪梅田歯科医院 院長就任
- 2020年4月 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 臨床准教授
- 所属学会/資格
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- 日本補綴歯科学会 代議員・専門医・指導医
- 日本老年歯科医学会 認定医
- 日本口腔インプラント学会 専修医
- IADR (International Association for Dental Research)
- ICP (International College of Prosthodontists)
主な講演・研究実績 ※2017年以降のものを抜粋
1.『全部床義歯臨床における 術前・術後評価の重要性』
第23回日本歯科医学会シンポジウム, 2016, 福岡
2.『全部床義歯製作にBPSを取り入れるメリット』
第2回補綴歯科臨床研鑽会 プロソ’16, 2016, 東京
3.『全部床義歯における難症例についての考察と対応』
第126回日本補綴歯科学会学術大会 臨床リレーセッション, 2017, 横浜
4.『全部床義歯臨床のプライオリティ,全部床義歯はなぜ難しいのかを理解する』
第493回大阪大学歯学部同窓会臨床談話会, 2017, 大阪
5.『BPS: a systematic clinical approach for edentulous patients』
第3回BPSシンポジウム, 2017, ソウル
6.『総義歯臨床ステップアップ〜かかりつけ歯科医師が知っておくべき重要ポイント〜』
第5回滋賀県歯科学術シンポジウム, 2018, 大津
著書
1. 全部床義歯臨床のビブリオグラフィー 全25回連載,月刊歯科技工 医歯薬出版社, 2015〜2016
2.特別企画 若手補綴医に訊く 総義歯印象が上手くなる~知識と臨床のポイント,歯界展望 128(6): 1144-1144, 2016
3.無歯顎患者への戦略的補綴介入.インプラントオーバーデンチャーと全部床義歯. デンタルダイヤモンド 42(12): 21-49, 2017
4.全部床義歯のClinical & Educational Question. 歯界展望 130(4): 625-641, 2017
5.現義歯から読み解く新義歯への手がかり.全12回連載, 歯界展望131(1):80-84, 2018
6.患者説明で変える総義歯臨床. 全6回連載, The Quintessence. 37(1): 164-172, 2018
7.総義歯知識メインテナンス.全12回連載予定 デンタルハイジーン 39(2): 208-209, 2019
8. CTデータを全部床義歯臨床へ活かす.前編 CTデータから得られる,全部床義歯製作に有用な情報.歯界展望 133(2): 256-263, 2019
まずは無料相談をご予約ください
入れ歯の専門歯科医師による無料の初診を実施しています。
お口のなかの状態を総合的に確認して、改善に向けた治療をご説明します。
- ・初診相談費用|無料(予約制)
- ・所要時間|60〜90分
- ・担当医師|補綴専門歯科医師
- ・当日の持ち物|お薬手帳/ご利用中の入れ歯
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お話を丁寧に詳しくお伺いします
入れ歯のお悩みやご要望、全身の健康状態など細かくお伺いします。
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今と今後の予測で診察
歯科医師が口腔内を診察します。入れ歯の状態、問題となる箇所、治療が必要な箇所を確認します。
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診断説明/治療計画/費用/期間
結果をもとに最適な入れ歯の形や材質、治療の内容と治療費・来院回数など丁寧にご説明します。
−初診の結果をお持帰りいただき
ご通院をご検討ください−